名古屋城のシンボル「金のシャチホコ」。黄金色に輝くその姿から、単に金箔(きんぱく)を貼っただけの飾りと思われがちですが、実は内部にしっかりとした構造があります。外装には多くの金箔や金板が用いられ、意匠の煌びやかさを支えるのは木材からなる芯材です。本記事では金のシャチホコが何の素材で構成されているのか、芯材と金箔の役割に注目しながらわかりやすく解説します。例えば、名古屋城の金シャチホコには約66kgの純金(約88kgの金板)が使われているとされ、その豪華さには圧倒されます。
目次
金のシャチホコの素材は何でできている?
金のシャチホコとは何かといえば、城郭建築における装飾物「鯱鉾(しゃちほこ)」のことで、頭が虎、体が魚の想像上の生物がモチーフです。名古屋城などでは火除けの守り神として屋根に飾られ、黄金に輝く外観が特徴となっています。ただし金のシャチホコといってもその素材が純金だけでできているわけではありません。数百年の歴史的変遷の中で作り方も変わりましたが、金のシャチホコは基本的に〈金属製の覆い〉と〈芯材〉の二重構造で作られています。外装には金箔や金板が貼られ、中の芯材が全体を支える仕組みです。
歴史的には、城の初期には瓦製の鯱鉾に金箔を貼る例が多く見られました。名古屋城の金シャチホコも当初は瓦製に金箔張りでしたが、江戸時代中期以降に木製と銅製の複合構造に改められました。現在の金シャチホコの姿は、木製の芯材の上に厚い金の板(金箔ではなく本金)を張り付けた構造となっており、単なる「金色の飾り」をはるかに超える精巧な造りになっています。
金のシャチホコとは?
シャチホコは古来伝わる想像上の生物で、頭は虎、体は魚とも言われます。城郭建築では火除けの守り神として用いられ、屋根の上に飾られてきました。中でも「金のシャチホコ」はその豪華さから大名や藩主の財力・権威を示すシンボルです。名古屋城の金シャチホコはそうした金シャチの代表例で、青空に映える金色の姿は名古屋を象徴する風景となっています。
ただし、金のシャチホコという名称の印象に反して、素材が全て金というわけではありません。伝統的な製作では木製の芯材に金箔や金板を貼り付ける二重構造になっており、外からは金色に輝いて見えつつも内部は軽量化された構造となっています。
木製の芯材:伝統的な素材
金のシャチホコを構成する芯材は、軽さと強度を兼ね備えた木製の板組みで作られるのが一般的です。木材は加工しやすく、屋根の重量を抑えられるため、城郭建築で古くから使われました。名古屋城の金シャチホコも木造の芯材に銅板を巻いた構造で、身や尾びれなどが精巧に彫刻されています。
一方、古い時代のシャチホコには瓦製のものや銅板・青銅板製のものもありました。瓦製シャチホコは陶器で作られており、軽量で防火性が高いという利点があります。江戸時代には瓦製シャチホコに金箔を貼る技術が発達し、安土城や大坂城でも瓦製の金シャチが使われました。名古屋城においても初代は瓦製でしたが、より耐久性を求めて木造・金属併用に改良されて現在に至っています。
瓦や金属を用いた芯材構造
松江城の鯱鉾は木造の芯材に銅板を貼ったものが使われています。銅板張りシャチホコは、耐候性が高く、細かな造形も表現できるのが特徴です。高知城や宇和島城には銅や青銅の鋳造製シャチホコがあり、こちらは金属そのものの鋳型で形作られているため重厚感があります。ただし鋳造品は非常に重いため、屋根に取り付ける際には十分な補強が必要です。
これらの例から分かるように、シャチホコの素材は城や時代によって多様です。しかし名古屋城の金シャチホコの場合、外装が大量の金である点を除けば、芯材には伝統的に木製が使用されています。木製の芯材を用いることで、金の量を多くしても全体の重量を抑え、安定した造形を実現しているのです。
金のシャチホコに使われる金箔とその構造
金箔とは何か?製法と性質
金箔は金を極薄のシート状に延ばしたもので、日本では工芸や建築装飾に古くから用いられてきました。厚さはおよそ0.1~0.2ミクロン(髪の毛の数千分の一)と非常に薄く、一枚で広い面積を覆えます。そのため軽量で鮮明な金色を長期間維持できる特長があります。
一方、薄いために折れやすく、貼り付けには高度な技術と細心の注意が必要です。金箔には純度が高い24金が使われることが多く、素材自体の耐久性も優れています。
金板(金のべ板)と金箔の違い
名古屋城の金シャチホコでは、薄い金箔ではなく厚みのある「金の板」が使われています。金の板は何層にも重ねた金箔より構造的にしっかりしており、風雨に強く鮮やかな輝きが長続きする利点があります。金箔に比べれば重量は増しますが、それでも木製の芯材が全体を支えるため、取り付けられた屋根の負担を大きく超えることはありません。
一方、金箔は非常に薄く延ばされた金で、大きな面積を軽く覆えるメリットがありますが、薄いため気温変化や湿度で縮んだり剥がれたりしやすい弱点があります。歴史的には瓦や銅板に金箔を貼る技術が発展しましたが、屋外で使う金シャチホコには丈夫な金板の方が適しているとされています。
金箔の貼り方と耐久性
金シャチホコの制作では、芯材に一枚一枚の金箔を丹念に貼り付けていく作業が必要です。金箔や金板は何重にも貼り重ねられ、その金属同士の接合部分には特殊な接着剤や屋根用の飾り釘で補強されます。そのため完成後は簡単には風化や剥離が起こりません。
しかし、長年屋外にさらされると経年劣化は避けられません。金箔や金板自体は酸化しませんが、貼り付けた接着部分が緩んだり、地震や落雷などで損傷することがあります。名古屋城の金シャチホコも昭和の再建以降、定期的に点検・補修が行われています。こうしたメンテナンスにより、現在もあの黄金の輝きが保たれているのです。
一般的なシャチホコの素材と金シャチホコの違い
瓦製シャチホコの特徴
城郭の初期にはシャチホコは瓦(陶器)で作られていました。瓦製シャチホコは軽量で防火・防水性能に優れるため、安土城や大坂城などにも用いられていたと伝えられます。瓦の場合、内部は空洞にして軽く仕上げ、表面に金箔や漆を塗って豪華に見せる工夫がされていました。
江戸時代以降、瓦製シャチホコは耐久性向上が課題とされたため、何層にも金箔を貼り重ねる技術が進みましたが、やはり板や金属製のものに比べると脆さが残っていました。名古屋城でも初代のシャチホコは瓦製だったため、次第に銅板張り・青銅鋳造などに移行していった経緯があります。
銅板張り・鋳造製シャチホコ
瓦製のシャチホコが一般的だった時期もありましたが、江戸時代以降にはより耐久性の高い銅板張りや鋳造金属製の鯱鉾が登場しました。銅板張りシャチホコは、木造の芯材に銅や青銅の板を貼り付けた構造で、松江城ではこの形式のシャチホコが現存しています。銅板製は瓦に比べ耐候性が高く、長期にわたり形状を保つことができます。
さらに、高知城や宇和島城には青銅の鋳造シャチホコが使用されました。これらは重厚で堅牢な上、鋳造ならではの細かい造形が可能です。一方で鋳造品は非常に重く、屋根に設置する際には土台や取り付け金具の強度が重要になります。
金シャチホコの特殊性
金シャチホコはこれら一般的な形式に比べ、その外装に純金を使う点で特殊です。使用される金の量が桁違いであるため、江戸時代の名古屋城では銀座の金座から納める金が鯱鉾に充てられたほどです。現在の金シャチホコも総重量数十kg規模の金箔・金板(前述の約66kg分の純金)が使用されています。
こうした大量の金を使う反面、基礎となる芯材や構造は他のシャチホコと基本的に同じです。唯一の違いは装飾素材の豪華さにあります。また、金シャチホコの場合は外装が直接雨風にさらされるため劣化が目立ちやすく、定期的な補修が欠かせません。城の見学時には、この金シャチホコの構造や素材を意識すると、名古屋城の歴史と技術への理解がさらに深まるでしょう。
まとめ
金のシャチホコは外見こそ黄金ですが、その多くは木製の芯材に金箔や金板を貼った二重構造で成り立っています。特に名古屋城の金シャチホコは純金の金板を使用し、その材料は総重量で数十kgにも上ります。その豪華さと同時に、木製芯材によって軽量化と安定性が図られ、何百年にもわたって輝きを保ち続けています。
歴史を見ても、シャチホコの素材は瓦から銅板、鋳造、と進化してきました。金シャチホコはその頂点に位置する存在であり、城郭文化の粋を示しています。名古屋城を訪れる際には、単にその金の輝きに目を奪われるだけでなく、「芯材と金箔」という構造に目を向けてみると、より一層興味深い歴史の一端を感じることができるでしょう。
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